土地家屋調査士が土地の測量を行う時、隣接所有者へ境界の立会い、確認の作業を行います。では、ここで言う「境界」とは一体何を意味するものなのでしょうか?「境界」とは、異筆の土地の間の境界で、客観的に固有なもの(最判昭和31年12月28日)とされているように公法上の境界ともも定義され『筆界』つまり、地番の境を意味を指します。不動産登記法が改正され、条文上にその定義が記載されました。

筆界の定義
 不動産登記法123条1号において、筆界とは「表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線」であると定義づけられています。

箇条書きにすると
①表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間
②当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた
③2以上の点およびこれらを結ぶ直線

ということになります。筆界の定義を2つ以上の点およびこれらの直線とした事については、今後、法務局において地図の精度を管理し、筆界点の公共座標値による地図情報の数値化・コンピュータ化を目標としているからだと考えられています。

1 原始的境界
明治時代に行われた地租改正時の所有権に基づき土地1筆毎を測量した際に確定した境界のことを言います。当時の現地(地表面)の所有的直接的支配されていた土地の平面的な広がりを人為的に区切り幾何学的線を地図(地引絵図,字眼図,更正図等)としたことに始まる境界で,原始的境界と呼ばれています。したがって,この境界を現地で確認するには,公図が作成されて以後130年有余の歴史を有しており,当時の作成経緯,方法,測量技術,地図作製術等から見た精度区分を精査しなければいけません。

2 登記官の処分により創設される境界
登記官が分筆登記を処理する事により生ずる分割線のことで、国家の持つ地割権を登記官の職権行使によって生じた境界のことを言います。この分割線を公図に記入することにより公示され公法上の境界となります。この公図に記入される場合のルール(分筆土地の実副長を公図の縮尺に応じて記入するのか,又は元筆の土地の長さに応じて按分した分筆土地を記入するのか等)が時代(所轄が税務署時代等)とともに,又は,扱い者によってまちまちで,今日の公図の精度を悪くし地図混乱地域を作った原因にもなっています。

3 公有水面埋立等で新たに発生じた境界

新しく誕生した土地(海等の埋立地や道水路の廃止による土地)を土地台帳への初登録及び,登記簿への表示登記において、登記官の職権処理により創設された境界をさします。

4 現地に実体法に因る換地処分境界が創設され,登記官の処分による境界
実体法(耕地整理法,土地改良法,土地区画整理法等)の規定に基づきそれぞれの事業が施工され公共施設や土地の区画が新設されます。所有権等は仮換地指定により使用収益権として権利変換が行なわれ,事業終了と共に,現地に境界が存在している点では1に説明した原始的境界に似ていますが,整理事業の換地処分(知事の認可により権利変換の効力が生ずる)が行なわれ,施行者から登記令に基づく申請を受けて登記官が登記簿の表題部に変更を登記し,同時に従前の公図を閉鎖し換地確定図を新たな公図として備え付けることにより創設された公法上の境界をさします。

一言で言えば、土地の筆界を土地の所有者が確認しあうためです。一つ(通常「一筆」と言います)の土地とこれに隣接する他の土地との間において、筆界点と筆界点を結んだ線、つまり境界線を隣接地所有者同士が確認しあう事により、正確な測量が行う事が出来、お互いの利益となります。筆界が確認された場合、書面として残され、将来の紛争を未然に防止する事にもなるのです。

立会いをお願いすると、土地所有者同士の日常生活上の問題から、敷地内への立ち入りを拒否する方がいます。中には、当方にも矛先が向けられ、つらい思いをする訳ですが、話しを聞くと心情をお伺いできる内容ばかりです。境界確認はお互い様の行為です。つまり隣接所有者の境界にも係わる事なのです。是非、ご協力をお願い致します。通常、土地家屋調査士は隣接所有者の方々へ 立会並びに事前測量承諾のための挨拶回りを行います。無断で敷地に入る事は御座いません。

民法(隣地の使用請求)には隣地の使用権が規定されております。 
第209条  土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
2  前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。 

しかし、測量の性質上、近隣を無視しておしすすめる訳には行きません。皆様もご存知のとおり、測量の対象となる境界は財産の範囲を示すものです。お互いの権利を守る上において、関係者らと立会いを実施した上で、話しを聴き、付近の状況などや関係資料と調整を行って確認する必要があると思います。それゆえ、立会いの協力と測量実施の為の必要最小限の敷地利用の協力をお願いしたいと思います。

境界立会がこれからどのように進められるのかを説明していきます。

まず一番初めは土地家屋調査士の方から郵便で依頼が来るか又は直接尋ねて来られるかして依頼されます。土地の所有者は皆さん、その土地を管理維持していく必要があると思います。境界立会いはお互い様と言う気持ちで必ず応じるようにしましょう。

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上記の図で説明しますと1番の土地の立会いを依頼する範囲は2番から8番の所有者並びに道路管理者である役所に立会依頼を致します。但し、既に道路として境界が確定済の場合は道路管理者の役所及び7番8番の立会いは不要になります。

土地所有者本人の立会いをお願いします。(大原則)

②しかし、止む終えない事情がある時は、家族・代理人でも構いません。その際は、境界確認に関しての委任状等が必要です。是非、本人だけでなく、ご家族の方も一緒に立会って頂ければと思います。中には、所有者本人ですら、境界がどこにあるのか分からない人もいます。境界を管理するのは、土地所有者ですが、家族一緒に確認して頂ければ将来的にも安心できます。

原則として相続人全員にお願い致します。 但し、相続人が多い場合や、所有者が複数人(共有)いる時等、場合によっては相続人代表者(管理者の方)を選出していただき、その方が立会いされても構いケースも御座います。

他の日に変えて頂いて構いません。日程を調整し、改めて立会いの日時を決めたいと思います。立会日時の設定は非常に苦労します。実際に立会って頂く日の1週間から10日位前に当事務所より再度連絡致します。土地所有者と協議の上で適宜決めさせて頂き、当日ご都合が悪い方のみ、後日立会いを行うようにしております。ご協力お願い致します。

おおよそ1件当たり15分〜30分程度あれば終わります。 境界標が埋設されていなかったり、トラブルがあるような場所、公共用地(道路管理者)との立会いは、時間も掛かります。また状況に応じ、再度の立会いを求めるような事もあります。

自分の土地の境界を主張出来る図面等が無いか探しておく事です。法務局に備え付けの測量図面があれば一番確実ですが、全ての方の土地に有るとは限りません。法務局に図面が無くても、昔に測量した図面、建物建築時の図面が重要書類(権利証)と一緒に保管されているかもしれません。

又、図面等が無くてもお年寄りの方(祖父母)から境界について話を聞いておくのも良いと思います。立会の前に少しでも多くの情報を得ている事が、境界の判断に迷わなくてすみます。

立会時間は出来るだけ守って下さい。土地家屋調査士の方は少なくとも10分以上前には現地におります。

①まずは誰が土地家屋調査士なのかを確認して下さい。補助者(土地家屋調査士事務所で補助をする者)が立会いを行っているかもしれません。立会当日は大勢の方が集まりますので、会員証で必ず土地家屋調査士本人かどうかを確認しましょう。

土地家屋調査士として依頼を受けた土地の筆界が何処なのか説明致します

③あらかじめ探して頂きました資料の提示をする事が御座いますので、その際はご協力をお願い致します。境界立会は「駆け引き」ではなく真の筆界(境界)を探り当てる為のものですから、出し惜しみをしても意味が御座いません。専門的な立場からお話致しますと、我々土地家屋調査士は、たとえお客様から依頼を受けたからと言って、そのお客様に有利になるような境界指示は絶対に行いません。あくまで公平中立に業務を遂行する事になっております。依頼されたお客様の土地を増やそうという悪意で境界同意を取りつけた事実が公になれば、土地家屋調査士の資格が剥奪されてしまいます。そのようなリスクを負った業務遂行は行いません。ですから、土地家屋調査士が提示した境界点というのは実際に測量し、色々な角度から考察して公平中立に妥当な境界点を算出しております。何故境界点が其処になると思われるのか、しっかりと説明を聞いていただければと思います。

提示された境界点に自分も納得出来るようでしたら立会は終了です。

もし相手方(=依頼を受けたお客様)の主張境界点と、自分が認識している境界点が相違する場合は立会は不調となります。どうしても納得出来ない場合は遠慮なく申し出て下さい。認識に差異が生じているのに境界に同意してしまうと後悔する事になりますし、後日になって同意出来ないと主張されると、依頼を受けたお客様にも迷惑がかかってしまいます。境界が納得出来ない場合はその場で主張された方が良いと思います。その際、どのような部分で納得出来ないかもはっきり主張して下さい。そうすれば、土地家屋調査士は納得出来ない部分を何等かの方法で解消致します。

何等かの手段を講じなくてはいけません。このままでは、せっかくの境界確定の機会を逃してしまいます。「境界が確定出来なくてもウチは別に構わないから」と放っておくのは、後に裁判に発展しかねませんし、お隣さんとのお付き合いに影響が出てしまいます。もし後日、自分の方から境界立会依頼しなくてはならない状況になった時は、立会いに応じてもらえないかもしれません。そこで

立会依頼に訪れてきた土地家屋調査士の方に自分の主張する境界がどうなのか判断を委ねて見る、のが良いと思います。土地家屋調査士は公平中立の立場ですので、あなたの主張が正しければ素直に認めてくれると思います。逆に間違っていれば否定されると思います。

②相手方が依頼している土地家屋調査士だから信用出来ないといった固定観念は無くしたほうが良いと思います。どうしても信用出来ない場合は、費用こそかかりますが御自分で他の土地家屋調査士に依頼するのも一つの方法です。測量して面積が登記簿面積に等しい位であれば納得が出来ると思います。

③お近くの境界問題相談センターに相談するのもひとつの方法です。

  境界問題相談センター埼玉は初回に限り無料で相談にのって貰えます。

④法務局に筆界特定申請を申請するのもひとつの方法です。

  筆界特定制度はこちらで説明してます

いずれの方法にせよ、最終的には境界を確定出来るよう努める必要があります。

境界が確認された場合、書類を作成し、確認した筆につき1通づつ保管していただきます。1度立会いを行った場合再度立ち会う必要がなくなります。後日、境界標が仮に紛失したとしても、復元する際にも必要で大切に保管願います。
境界確定協議書(官民境界)・・・公共用地において、境界確定申請書が提出され、境界が確認された場合
に確定証明として官公署の著名、押印がなされたものです。
筆界確認書(民民境界)・・・民有地において境界が確認された場合、確認の成立の証明として著名、押印がなされたものです。

境界に異存は無いけれど書類に署名押印はちょっと、(と心の中で)

「木が越境している。注意しているのに切ってくれない」とか、

「自治会で決めた道路やゴミ置場の清掃をしない」とか、

「近所付き合いがないから」とか・・・・私的理由から署名を拒否する方もたまにいらっしゃいます。

是非、署名押印をお願いします。
過敏に慎重になって「トラブルに巻き込まれるような署名などしたくない」と思う方が大半だと思います。署名出来ない理由をあげればきりがありませんが、境界確認はお互い様です。あの時に署名してくれなかったから、今度はうちも署名するのは止めよう・・・なんて事にもなりかねません。 将来的に土地を手放す時が訪れて来るかもしれません。売買では「隣接地所有者の全員の立会証明書類がなければ、契約を解除します。」と言った特約を買主側で要求することも増えてきており、円滑な取引に支障を来たす恐れがあります。

いずれの場合もお気持ちは分かりますが、境界に異議がなければ、「立会いを行い土地境界の確認した事」に基づく事実を記すための書類ですので、ご協力お願い申し上げます。

 

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